はじめに
医学部受験に合格することは簡単なことではありません。
特に30代・40代になってから医師を目指す方は、時間的な制約や経済的な負担など、学力以外の部分で現役生とは異なる課題に直面します。
しかし、医療従事者になりたいという強い意志と、綿密な戦略と計画があれば、合格は決して不可能ではありません!
30代、40代の医学部受験が難しいわけ
2018年に発覚した医学部受験の際、差別的判定があった大学が何校も出てきたことはニュースなどでも大きく取り上げられたので記憶されている方も多いと思います。
医学部に入学後勉強し、国家資格を取得し、研修過程を終え一人前の医師になるまでに約10年はかかるといわれており、そのため現場でより長く活躍できる現役生、妊娠・出産などライフイベントの少ない男性を優先的にするため面接や小論文の配点を調整するといったものでした。
しかし、「女性差別」のみならず、差別判定の理由の中には「年齢差別」も含まれていました。
先述した通り、一人前の医師になるまでには時間がかかるため、高めの年齢の人が医学部に合格して医師になったとしても、医師として活躍できる期間が短いという判断なのでしょう。
いずれにしても、これらのことが公になってからは、差別的な合否は減ってきたものの、現状としては30代、40代の人の医学部合格は、まだまだ難しい現状とも言われています。
そのような「狭き門」である医学部入試で30代や40代が医学部受験を成功させるためには、どのようなことに気をつけ、対策すればよいのでしょうか。
大学選びは慎重に
30代や40代で医学部受験を成功させるためには、まずは大学ごとの年齢に対する上限を理解しておく必要があります。
多くの大学では年齢制限なく受験することはできます。
しかし、年齢が上がるにつれて合格が厳しい大学があるのもまた事実です。
だからこそ大学選びや対策、傾向を理解しておく必要があるのです。
この記事の後半に、比較的高齢の合格者が多い大学を掲載しておきますので、ぜひご覧になって検討の材料にしてください。
逆算した計画立てが重要
30代や40代で医学部受験を成功させるためには、行き当たりばったりの勉強は禁物。緻密な計画を立てることが重要です。
受験する大学や学部を決めたら、そこから逆算して、いつまでにどのような勉強をしておけばよいか、スケジュールを立てましょう。
医学部受験は、科目数が多く、難易度も高いため、短期間で合格を勝ち取るのは難しいでしょう。
よほど学力に自信がある人は別として、少なくとも2年以上の期間をかけて、計画的に勉強を進めていくことが必要だという認識を持ちましょう。
リスクを理解する
30代や40代で医学部受験を成功させるためには、リスクを理解することも大切です。
医学部受験は、合格率が低く、不合格になるリスクが常にあります。
不合格になった場合の経済的な負担や、時間、キャリアの損失など、さまざまなリスクが発生する可能性がありますし、あらかじめ想定しておく必要があります。
要は「ダメだった時のことを考える」ことですね。
そのため、リスクを理解した上で、それをどう回避し戦略を立てていくかがとても重要になってきます。
失敗要因を未然に理解しておく
では、30代、40代の受験生が医学部受験に失敗する要因はどのようなものがあるでしょう?
主に以下の3つに分類されます。
(1)計画性の欠如
(2)学力不足
(3)モチベーションの低下
30代や40代で医学部受験を成功させるためには、これらの失敗要因に対しての対策を講じる必要があります。
上記3点の対策を1つ1つ考えていきましょう。
まずは「計画性の欠如」です。
仮に約2年間かかることを目標として想定した場合、月々の計画を作成し、月々の進行状況を日割りし毎日の始と終わりに進行状況を確認し、更新していくことがお勧めです。
その際に注意すべきことは、頭の中で漠然と計画を作ることは避けた方が良いでしょう。
紙やモニター上に文字化し微調整できるようなスケジュールを「見える化」することで進行状況や日々追う部分が明確になります。
また、日々追うことで毎日の締めくくりにスモールゴールをきりましょう!達成感が得られるのでモチベーションの低下対策やスケジュールを組み直すちょっとした休憩時間になるのでお勧めです。
次に「学力不足」です。
これは、30、40代になって再度受験を考える人すべてに共通していえることかもしれませんね。
最初にセンター試験の過去問を解くことからスタートすることをお勧めします。つまり、自分自身の現時点における学力を正確に把握するところから出発しましょう。何が苦手で何が抜けているのか。この認識を持たないまま、やみくもに勉強をしても、砂漠の中を方位磁石を持たずに歩くようなものです。
また、苦手な単元を独学で補うのは参考書を用いたとしても難しく尚且つ時間のロスに繋がりますので非効率です。予備校を活用し客観的に苦手分野を分析・解説してもらい対策してもらう方が無駄なく時間のロスも防げます。
最後に受験生の誰もが一度ならず陥りがちな「モチベーションの低下」です。
受験は自身の戦いと感じ、つい孤立してしまうことが多くモチベーションが下がりがちです。
それでは心の健康によろしくありません。
まず大前提として、規則正しい生活リズムと、バランスの良い食生活を保つように心がけましょう。
また、もしいれば同じ立場の人と情報交換をしたり、家族やパートナーと話してみたり、軽く運動する習慣を組み込んでみることも意外と効き目があります。
このような運動や会話などをバランスよくこなすことで、それがリフレッシュにつながりますし、「時間までにここまで終わらせよう!」と気持ちに火をつけることができます。
また、計画を立てる際は、あまり無理して詰め込みすぎずに、定期的に休日を設け、しっかりリフレッシュできる日を作ることも大事です。
あまり意気込み過ぎると、あとでリバウンドがきますから。
知識の漏れや抜けに注意する
医学部受験では、膨大な量の知識が必要になります。そのため、知識の漏れや抜けがないように、しっかりと復習をしておくことが大切です。
また、医学部受験の過去問を解き、自分の苦手分野を把握しておきましょう。
入学後の費用も考慮する
30代や40代で医学部受験を成功させ、医学部に入学できたとしても、入学後の費用も考える必要があります。
医学部の学費は、国公立大学でも年間100万円前後、私立大学では年間200万円以上、500万円を超える高額のところも少なくないということも念頭に入れておきましょう。
そのため、入学後の費用をどのように捻出するか、また在学中の生活費なども事前に計画を立てておくことが大切です。
受験勉強にひたすら専念
30代や40代で医学部受験を成功させるためには、医学部受験の勉強に専念できる環境を整えることも大切です。
仕事をしながらの受験勉強をすることは、現役生や一浪生に比べると、勉強時間や体力面で大きなハンデになりますし、肉体的、精神的にも大きな負荷がかかります。
そのため、仕事と勉強を両立させながら、家族や身近な人にサポートしてもらえる環境を作り、医学部受験に専念するという環境作りも検討しましょう。
自分に合う教育機関を見つける
ライバルの大半は現役の高校生か浪人予備校生です。
彼らと同じレベルの学力であれば、大学側は医師として現役で活躍できる期間の長い現役生を選ぶことでしょう。
だからこそ、受験生の中でも上位の学力を目指す必要があります。
では、上位の学力を身につけるには?
それは、独学よりも人から習う、人から管理される環境に身を置く方が良いです。
特に、社会人の場合は、学業から離れ社会に出ていた分のブランクを埋める必要があります。そのためには、独学よりも医学部予備校に通う方が効率的です。
今の自分の学力がどれほどあり、医学部に合格するために自分に必要な分野や武器になる得意科目を分析できる上、自分に見合った学習法を教えてくれるので無駄のないカリキュラムを組むことができるでしょう(もちろん予備校によって差はありますが)
今の自分の偏差値すらわからないようでは独学では限界があります。
浪人生であっても現役高校生との勉強時間の差をなくすため予備校に通って勉強する人が大半を占めます。家にこもって独学で勉強するだけでは、難関かつ狭き門である医学部合格はおぼつかないということをわかっているからです。であれば、社会人であればなおさらです。
学習課題を出してくれるだけではなく、その進捗や習得度までも細かくチェックしてくれるところの方が良いでしょう。
このようにどの教育機関に在籍するかによって、医学部受験の成否は大きく左右されますので、塾、予備校、通信指導などの教育機関選びは慎重に行うべきでしょう。
できれば、複数のホームページをめぐって当たりをつけ、後に資料を取り寄せ熟読、条件に合ったところを絞り込み、できればアポイントを取って見学を兼ねて詳しい説明を直接聞きに行くと良いと思います。
システムや料金に納得がいったとしても、直に訪れた時の雰囲気などから「何かが違う」という違和感を直感で感じることもあるかもしれません。料金を払って勉強をする環境選びは大事です。余計なことに気を奪われることなく、一心不乱に勉強できる環境を選びたいものです。
情報戦に勝つ
30代や40代が医学部で受験を成功させるためには、各大学の受入れ傾向などの情報収集が欠かせません。
現役や一浪生を重視する大学もありますのが、その一方で30代や40代の学生が在籍する大学もあります。
国公立大学のみではありますが、例えば2023年の30歳以上の入学者は以下のとおりです。
9人 島根大学
4人 山形大学 滋賀医科大学
3人 富山大学 山梨大学 信州大学 三重大学 大分大学
2人 和歌山県立医科大学 岡山大学 熊本大学 琉球大学
1人 東北大学 群馬大学 千葉大学 東京医科歯科大学 新潟大学 名古屋市立大学 大阪公立大学 奈良県立医科大学 長崎大学 鹿児島大学
島根大学は9人、山形大学、滋賀医科大学は4人の30歳以上の学生が在籍しています。
30代以上で医学部受験を考えている方にとっては心強いと思いませんか?
医学部に在籍している学生は、決して20代だけではないのです。
まとめ
30代40代の医学部受験は、決して簡単ではありませんが、決して不可能なことでもありません。しっかりとした戦力を持ち効率よく準備することで合格を勝ち取ることは可能です。
ぜひ、本記事が、30代や40代の医学部受験を志す人の参考になれば幸いです。
国公立大学医学部年齢層
新潟大学 18~40代以上
岐阜大学 18~40代以上
京都府立医科大学 18~40代以上
高知大学 18~40代以上
札幌大学 18~30代後半
東京大学 18~30代後半
山梨大学 18~30代後半
三重大学 18~30代後半
島根大学 18~30代後半
徳島大学 18~30代後半
琉球大学 18~30代後半
横浜市立大学 18~30代前半
富山大学 18~30代前半
信州大学 18~30代前半
名古屋大学 18~30代前半
名古屋市立医科大学 18~30代前半
滋賀医科大学 18~30代前半
和歌山医科大学 18~30代前半
香川大学 18~30代前半
長崎大学 18~30代前半
鹿児島大学 18~30代前半
九州大学 18~29歳
山形大学 18~28歳
鳥取大学 18~28歳
熊本大学 18~28歳
神戸大学 18~27歳
岡山大学 18~27歳
弘前大学 18~26歳
千葉大学 18~26歳
浜松医科大学 18~26歳
大阪大学 18~26歳
広島大学 18~26歳
山口大学 18~26歳
旭川医科大学 18~25歳
大阪公立大学 18~25歳
福島県立医科大学 18~24歳
福井大学 18~24歳
東京医科歯科大学 18~24歳
筑波大学 18~23歳
宮崎大学 18~23歳
京都大学 18~22歳
大分大学 18~22歳
東北大学 18~21歳
秋田大学 18~21歳
群馬大学 18~21歳
金沢大学 18~21歳
奈良県立医科大学 18~21歳
愛媛大学 18~20歳
佐賀大学 18~20歳
医学部に現役で合格するのは難しく、ほとんどの大学は浪人生の合格者の方が多いですね、、、では、現浪比を見てみましょう
2023年度私立大学医学部 入学者の現浪比
岩手医科大学
現役:29.2%
1浪:25.4%
2浪:12.3%
3浪その他:33.1%
東北医科薬科大学
非公開
自治医科大学
現役:48.8%
1浪:32.5%
2浪:16.3%
3浪その他:2.4%
獨協大学
現役:33.3%
1浪2浪3浪その他:66.7%
埼玉医科大学
現役:40.0%
1浪:30.0%
2浪:17.7%
3浪その他:12.3%
国際医療福祉大学
現役:46.7%
1浪:33.6%
2浪、3浪その他:19.7%
杏林大学
非公開
慶應義塾大学
現役:81.5%
1浪:17.3%
2浪、3浪その他:1.2%
順天堂大学
現役:63.5%
1浪:30.5%
2浪:3.5%
3浪その他:2.5%
昭和大学
現役:41.0%
1浪、2浪、3浪その他:59.0%
帝京大学
非公開
東京医科歯科大学
現役:42.6%
1浪:33.6%
2浪:18.0%
3浪その他:5.7%
東京慈恵会医科大学
現役:54.3%
1浪:32.4%
2浪:6.7%
3浪その他:6.7%
東京女子医科大学
現役:50.9%
1浪:21.8%
2浪:13.6%
3浪その他:13.6%
東邦大学
現役:53.3%
1浪:30.3%
2浪:13.1%
3浪その他:3.3%
日本大学
現役:37.4%
1浪:29.0%
2浪:13.0%
3浪その他:20.6%
日本医科大学
現役:46.4%
1浪:44.0%
2浪:7.2%
3浪その他:2.4%
北里大学
現役:38.6%
1浪、2浪、3浪その他:61.4%
聖マリアンナ医科大学
現役:36.5%
1浪:28.7%
2浪:18.3%
3浪その他:16.5%
東海大学
現役:31.0%
1浪:29.0%
2浪:22.0%
3浪その他:18.0%
金沢医科大学
現役:13.5%
1浪:29.7%
2浪:21.6%
3浪その他:35.1%
愛知医科大学
現役:32.8%
1浪、2浪、3浪その他:67.2%
藤田医科大学
現役:30.8%
1浪:30.8%
2浪:15.0%
3浪その他:23.3%
大阪医科薬科大学
現役:36.6%
1浪:28.6%
2浪:15.2%
3浪その他:19.6%
関西医科大学
現役:37.8%
1浪、2浪、3浪その他:62.2%
近畿大学
現役:21.6%
1浪、2浪、3浪その他:78.4%
兵庫医科大学
現役:32.6%
1浪、2浪、3浪その他:67.4%
川崎医科大学
現役:25.4%
1浪:20.6%
2浪:20.6%
3浪その他:33.3%
久留米大学
現役:15.4%
1浪:36.9%
2浪:28.5%
3浪その他:19.2%
産業医科大学
現役:30.5%
1浪:40.0%
2浪:16.2%
3浪その他:13.3%
福岡大学
現役:19.3%
1浪、2浪、3浪その他:80.7%