地方の医科大受験生は知っておこう
近年、医学部入試において地域医療に関する問題が出題される機会が増えています。
特に、地方大学の面接の際は「地域医療に興味を持ったきっかけは?」「地域医療で実現したいことは?」などの質問をされることが多いです。
また、小論文でも「地域医療の現状と理想」「へき地医療の課題と解決策」など、地域医療に関するテーマが出題されることが多くあります。
最近よく耳にする地域医療。具体的な意味や医学部受験生が把握すべき地域医療について皆さんは対策していますか?
そこで今回は、医学部受験生に向けて地域医療に関する面接・小論文対策のポイントを解説します。
地域医療の定義と役割を知っておこう!
まず地域医療とは何?
一言で言えば、地域医療とは、地域住民の健康を守るために、地域の医療資源を総合的に活用して行う医療のことです。
地域医療には、大きく以下の3つの役割があります。
1、住民の健康増進と疾病予防
2、病気やケガの治療
3、介護やリハビリテーション
地域医療は、病院や診療所などの医療機関だけでなく、行政や福祉団体などの地域資源も活用して行われるのが特徴です。また、地域住民の参加や協力も重要です。
地域医療の課題
もう少し詳しく知っておきましょう。
地域医療には、以下の3つの課題があります。
1、医療資産の偏在
2、医師不足
3、高齢化
「医療資産」の偏在とは、都市部に医療資源が集中し、地方部では医療資源が不足していることを指します。
「医師不足」とは、医師の数が地域住民のニーズに追いついていないことを指します。高齢化とは、高齢者の人口比率が高まっていることです。
これらの課題は、地域住民の健康を守る上で大きなリスクとなっています。
地域医療の理想
現状だけではなく、理想の形を知っておいた方が、小論文も書きやすいですし、面接でも質問に悩むことがなくなりそうですね。
地域医療の理想の形は、以下の3つです。
1、患者中心の医療
2、地域住民の健康増進
3、地域の連携
「患者中心の医療」とは、患者のニーズに応じた医療を提供することです。
「地域住民の健康増進」とは、地域住民が健康に暮らせるように支援することです。
「地域の連携」とは、医療機関や行政、福祉団体などが連携して地域医療を推進することです。
これくらいの知識を持っていると、知識を持っていない状態で試験会場に臨む受験生とは違いメンタル的にも余裕を持って試験会場に足を運べると思います。
面接でもよく質問される「地域医療」についての面接対策
では面接対策。
面接で問われるのは、知識や定義だけではなく、地域医療に対するあなたの考え方や熱意が問われます。
そのため、以下のポイントを押さえておくとよいでしょう。
1、高齢社会における地域医療の重要性
2、地域医療の現状(医療資産の偏在、医師不足、高齢化など)
3、地域医療の理想(患者中心の医療、地域住民の健康増進など)
もし時間があれば、地域医療に携わる医師や看護師のインタビュー記事や、地域医療に関する書籍などを読んで、実際の現場の声や考えにも目を通しておくと説明がより具体的になり評価が上がる可能性大。
特に地方の大学を受検する場合は、その地域が抱える独自の地域医療の問題を調べておくとなお良いでしょう。
例)岩手医科大を受験する場合⇒岩手県内の地域が抱える独自の地域の問題
また、面接では、地域医療に対するあなたの考えを具体的に説明できるようにしておきましょう。
例えば、以下のような質問に対して、どのように答えるか考えてみてください。
Q1:地域医療に興味を持ったきっかけは?
Q2:地域医療で実現したいことは?
Q3:地域医療の課題と解決策について、あなたの考えを述べてください。
※模範回答例は、記事最後に掲載しておきます。
小論文対策
小論文では、地域医療に関するテーマについて、自分の考えを論理的に構成して書くことが求められます。そのため、まずはテーマについてしっかりと考え、論理的な構成を考えておきましょう。
具体的には、以下のポイントを押さえておくとよいでしょう。
1、テーマの定義
2、テーマの背景や課題
3、課題の解決策
また、地域医療に関するデータや事例などを、自分の論を裏付けるために活用しましょう。以下に、地域医療に関する小論文のテーマ例をいくつか挙げてみます。
1、地域医療の現状と理想
2、へき地医療の課題と解決策
3、地域包括医療の実現に向けた取り組み
4、コメディカルや福祉職との連携による地域医療の充実
5、地域医療支援病院の役割
6、かかりつけ医の重要性
7、大規模災害や感染症への備えとしての地域医療
高齢化の進展は、地域医療の課題をより深刻化させています。高齢者は、若年層と比べて慢性疾患の罹患率が高く、医療ニーズが高い傾向にあります。
また、高齢者は移動や外出が困難になるため、地域住民の健康を守るためには、地域医療の体制を整備することが重要な課題となります。
具体的には、以下のような取り組みが必要とされています。
1、かかりつけ医の普及
2、在宅医療の充実
3、介護との連携強化
「かかりつけ医」は、地域住民の健康を総合的に診る医師であり、高齢者の健康管理に欠かせません。
「在宅医療」は、高齢者が自宅で療養できるようにする医療であり、高齢者の生活の質を維持するために重要です。介護との連携強化は、高齢者の医療と介護を一体的に提供するために不可欠です。
医療技術の進歩も、地域医療の課題に影響を与えています。医療技術の進歩により、高度な医療が必要な患者が増加しています。しかし、これらの患者を受け入れられる医療機関は限られており、地域住民のニーズに応えることができない場合もあります。
この課題を解決するためには、地域の医療機関が連携して、患者のニーズに応じた医療を提供することが重要です。また、遠隔医療やオンライン診療などの活用も有効と言えるでしょう。
疾病構造の変化も、地域医療の課題に影響を与えています。近年、がんや生活習慣病などの慢性疾患の罹患率が増加しています。これらの疾患は、早期発見・早期治療が重要ですが、地域住民の受診率は必ずしも高いとは言えません。
この課題を解決するためには、地域住民への健康教育や啓発活動を強化することが重要です。また、地域の医療機関が連携して、地域住民の受診率を向上させるための取り組みも必要です。
「医師不足」も、地域医療の課題のひとつです。近年、医師の数が減少傾向にあり、特に地方部では医師不足が深刻化しています。
この課題を解決するためには、医師の働き方改革や、地域医療に魅力的な職場環境の整備が重要となります。また、看護師や薬剤師などの医療従事者の育成・確保も不可欠です。
地域医療は、地域住民の健康を守るために欠かせないものです。しかし、今日の日本の多くの地域では十分に地域医療が行き渡っているとは言い難いです。
地域医療に関しての課題は山積していますが、これらの課題を一つひとつ丁寧に解決していく姿勢が大変重要です。そのためには、医療機関のみならず、行政を巻き込み、地域住民への理解と連携も重要な要素となりますので、大切なのは医療従事者としての熱意、人間性、そしてコミュニケーション能力です。
面接 もっとも重要なこと
最後に、面接において知識よりももっともっと大事なこと、それは相手(面接官)に与える印象ですね。どんなに試験の成績が良くても、あるいは知識があったとしても、暗い印象やヒネた印象を相手に与えてしまうと、かなりのマイナスとなります。
ですので、面接時は、元気に明るくハキハキと。これ最低限必要なことですし、もっとも重要なことです。
コミュニケーション能力があることもしっかりと面接官にアピールしましょう!
まとめ
医学部受験生は、地域医療の課題を理解し、地域医療に貢献したいという意欲をしっかりとアピールするようにしましょう。
地域医療の現場を体験・経験したり、地域医療に携わる医師や看護師の話を聞いたりして、地域医療の魅力や課題について理解を深めることで受験の際、幅広く役に立てる材料にしていきましょう。
面接解答例
先ほど“面接でもよく質問される「地域医療」についての面接対策”の項で取り上げた面接試験でよく問われる質問の模範的な回答例を記して起きます。
Q1:地域医療に興味を持ったきっかけは?
<回答例>
私は、幼い頃から祖母が病気で入院する機会が多く、病院の様子や医療従事者の姿を身近で見てきました。その中で、医師は患者さんの命を救うだけでなく、患者さんとその家族の心の支えにもなれる存在であると感じました。
また、学生時代には、地域医療に携わる医師の講演を聴く機会がありました。その講演の中で、地域医療の現場では、患者さんとの距離が近く、一人ひとりの患者さんに寄り添った医療を提供できること、また、地域の住民の方々との交流を通じて、地域社会に貢献できることを学びました。
私は、そのような地域医療に携わる医師になりたいと考えるようになりました。将来は、地域に根ざした医師として、患者さんとの信頼関係を築き、地域医療に貢献していきたいと考えています。
<解説>
この解答例は、地域医療に興味を持ったきっかけを具体的に説明しており、そのきっかけから地域医療に貢献したいという志望動機につながっていることが評価できます。また、地域医療の魅力を理解し、地域医療に貢献するための具体的なビジョンを持っていることも評価できます。
Q2:地域医療で実現したいことは?
<回答例>
地域医療で実現したいことは、大きく分けて3つです。
1つ目は、患者さんとの信頼関係を築き、一人ひとりの患者さんに寄り添った医療を提供することです。地域医療では、患者さんとの距離が近く、一人ひとりの患者さんをよく知った上で医療を提供することができます。そのため、患者さんのニーズに応える医療を提供するためには、患者さんとの信頼関係を築くことが重要です。具体的には、患者さんとじっくりと話をして、その方の思いや悩みを聞き、それに応じた医療を提供していきたいと考えています。また、患者さんの生活や家族の状況も考慮しながら、その方に最適な医療を提供していきたいと考えています。
2つ目は、地域の住民の健康を守り、地域社会に貢献することです。地域医療は、地域の住民の健康を守り、地域社会に貢献する役割があります。そのため、地域の住民の方々と連携しながら、地域の健康課題の解決に貢献していきたいと考えています。具体的には、地域の住民の方々に健康に関する情報を提供したり、健康イベントを開催したりすることで、地域の住民の健康意識を高めていきたいと考えています。また、地域の医療機関や介護施設などと連携して、地域の住民が必要な医療や介護を受けられるようにしていきたいと考えています。
3つ目は、地域医療の担い手不足の解消に貢献することです。少子高齢化や人口の減少が進む中、地域医療の担い手不足が深刻化しています。そのため、地域医療の担い手不足の解消に貢献したいと考えています。具体的には、地域医療の魅力を発信したり、地域医療に携わる医師の支援を行うことで、地域医療に携わる医師を増やしていきたいと考えています。また、地域医療の魅力を理解した学生を育てることで、将来の地域医療の担い手となる人材を育てていきたいと考えています。
これらの実現に向けて、日々努力していきたいと考えています。
<解説>
これらの回答は、いずれも地域医療の特徴や役割を理解しており、具体的な方法を述べている点で、模範的であると言えます。また、地域医療に貢献したいという熱意が伝わってくる点も、評価されます。
なお、地域医療で実現したいことは、必ずしもこの3つに限られるわけではありません。自分の経験や考えに基づいて、独自の回答を述べることもよいでしょう。
Q3:地域医療の課題と解決策について、あなたの考えを述べてください。
<回答例>
地域医療の課題は、大きく分けて以下の3つです。
1つ目は、担い手不足です。少子高齢化や人口減少が進む中、地域医療に携わる医師や看護師の不足が深刻化しています。そのため、地域の住民が必要な医療を受けられないという問題が生じています。
2つ目は、医療の質の低下です。担い手不足が原因で、地域の医療機関の閉鎖や、医療の質の低下が懸念されています。また、地域の医療機関と大規模病院との連携がうまくいかず、患者さんの転院が困難になるという問題もあります。
3つ目は、医療費の増加です。高齢化に伴い、医療費の増加が大きな課題となっています。地域医療の担い手不足や医療の質の低下が、医療費の増加をさらに加速させる恐れがあります。
これらの課題を解決するためには、以下の3つの取り組みが重要です。
1つ目は、地域医療の魅力を発信し、地域医療に携わる医師や看護師の増加を図ることです。地域医療は、患者さんとの距離が近く、一人ひとりの患者さんに寄り添った医療を提供できるという魅力があります。その魅力を発信することで、地域医療に携わる医師や看護師の増加を図ることができます。また、地域医療の魅力を理解した学生の育成も重要です。
2つ目は、地域の医療機関と大規模病院との連携を強化することです。地域の医療機関と大規模病院との連携を強化することで、地域の医療機関の閉鎖や、医療の質の低下を防ぐことができます。また、患者さんの転院が円滑に行われるようにすることで、医療費の増加を抑制することができます。特に、大地震やコロナなどの災害時においては、地域の医療機関と大規模病院の連携が重要です。
3つ目は、地域の住民の健康意識を高めることです。地域の住民の健康意識を高めることで、病気の予防や早期発見・早期治療を促進することができます。これにより、医療費の増加を抑制することができます。また、健康づくりを通じて、地域の住民の健康を守り、地域社会を活性化することも重要です。
今もなお余震の続く能登半島地震では、被災地の医療機関が被災し、医療体制が崩壊していると報道されています。東日本大震災より対策されつつある地域の医療機関と大規模病院の連携がまだ万全ではないことが、医療の遅れや患者の転院の困難さにつながっていると考えます。
また、新型コロナウイルス感染症の拡大では、感染者の急増により、医療機関の逼迫が深刻化しました。地域の医療機関と大規模病院の連携を強化することで、感染者の受け入れや医療体制の維持に貢献することができました。
大地震やコロナなどの災害時においては、地域の医療機関と大規模病院の連携が、地域の住民の命を守るために欠かせません。地域医療の担い手不足や医療の質の低下を解決し、地域の医療体制を強化していくことが重要です。
以上の取り組みを進めることで、地域医療の課題を解決し、地域の住民の健康を守ることができると考えています。
<解説>
地域医療の課題と解決策を、具体的な事例やデータなどを交えて説明しています。また、地域医療に貢献したいという熱意が伝わってくる回答となっています。
なお、令和6年能登半島地震において、地域の医療機関と大規模病院の連携がまだ不十分であり、医療の遅れや患者の転院の困難さにつながったことについて触れています。また、新型コロナウイルス感染症の拡大において、地域の医療機関と大規模病院の連携が強化されたことで、感染者の受け入れや医療体制の維持に貢献したことについても触れています。これらの事例を挙げることで、地域の医療機関と大規模病院の連携が、地域医療の課題を解決するために重要であることを強調しています。