今回は少し趣向を変えて、
「日本の医療の現状と未来」についてお話しします。
これらは、医学部入試の
面接や小論文で非常に重要なテーマで、
小論文、あるいは面接でも
よく問われる題材です。
特に「地域枠」で
医学部を受験する方には欠かせない知識です。
地域枠入試を受験する受験生は、
それこそ判で押したように
「地域医療に携わりたい」と言います。
ほとんどの塾や予備校や学校の先生が、
地域枠で受験するなら、
地域医療を志望動機にしろと指導するからです。
だから、ほとんどの受験生は
医師免許を取ったら地域医療に携わりたいと言います。
ほぼ100パーセントの確率で。
面接官の気持ちになってみてください。
毎年、何人も、何十人もの生徒が、
同じことを言って面接を受けにくるのです。
すると、
「地域医療をやりたい」という志望理由は
合否を判定する材料にはなりませんよね。
もちろん「地域医療をやりたい」という
動機そのものは間違いではないですし、
変える必要もないでしょう。
大切なのは「その先」です。
「地域医療」という言葉を仕込むだけで満足しているのか、
それとも本当に地域医療に貢献したいと考えているか。
考えているとしたら、
では具体的にどのように貢献したいのか。
そこまで考え、準備しておく必要があります。
だから大学の面接官は、
地域医療への本気度を測るために
具体的な知識や考えを求めます。
「地域医療をやりたい!」と口先だけで語っても、
突っ込まれた質問に答えられなければ
信頼を得られません。
質問されて窮すれば、
そこでジ・エンド。
「ははぁ、にわか仕込みの知識で面接に来たな」
面接官にそう思われて、
残念な結果に終わることでしょう。
そうならないためにも、
今回は日本の医療体制の特徴や課題、
そして未来に向けて考えるべきポイントを
整理していきましょう。
まずは、日本の医療全体の現状を見ていきましょう。
1. 日本の医療の特徴
日本の医療は、次のような特徴があります。
・医療施設と機器の充実
日本は病床数やMRI・CTスキャナーの台数が
人口当たりで世界トップクラスです。
これにより、
患者が必要な医療を受けやすい環境が整っています。
・医師数の不足
その一方で、医師の人口当たりの数は
欧米各国より少なく、
特に地方では深刻な医師不足が問題となっています。
・高齢化社会の進行
平均寿命が長く、65歳以上の高齢者割合が高い日本では、
医療ニーズが増加しています。
そのため、医療現場の負担が
さらに大きくなっています。
2. 地域医療の重要性と現状
地域枠入試を志望する場合、
面接官は
「地域医療についてどれだけ知っているか」を
深掘りしてきます。
その際に知っておくべきポイントは以下の通りです。
・慢性的な医師不足
地方では、特に診療科の偏在が顕著です。
都市部に医師が集中し、
地方では医師不足が深刻化しています。
この背景には、働きやすい環境の都市集中や、
地方での勤務はハードであるという
イメージが影響しています。
・地域医療の課題
高齢者の増加に伴い、
地方では慢性疾患や
介護を必要とする患者が増えています。
そのため、単に医師がいるだけではなく、
地域の特性に合った医療提供体制を
構築する必要があります。
3. 未来を見据えた取り組み
医学部志望者は、
将来は医師として働くわけですから、
日本の医療が抱える課題に対して
どれだけ真剣に考え、
自分の考えを示せるかが
とても重要です。
以下は、考えるべき具体的な方策の例です。
1、医師の偏在解消
人口構成の変化に応じた医師の
適切な配置が必要です。
例えば、診療科ごとの医師の必要数を見極め、
地方での勤務を選びやすくする
インセンティブを導入することが挙げられます。
2、外国人医療従事者の活用
医療現場の人手不足を補うため、
国際的な協力も必要です。
外国人医師・看護師との協働は、
医療の国際化にもつながり、
患者にとって多様性のある選択肢を提供できます。
3、地域医療の魅力向上
「地方で働く医師のやりがい」や
「地域医療ならではの良さ」を発信することも重要です。
受験生自身が将来、地域医療にどう貢献したいかを
具体的に語れると、説得力が増します。
4. 面接や小論文でのアピール方法
面接官が注目するのは、
あなたの知識と熱意が具体的かどうかです。
たとえば、次のような準備をしておきましょう。
5、データを活用する
「日本はMRIの台数が多いが、
医師数が不足している」
などといった具体的な事実を踏まえたうえで、
自分の考えを述べましょう。
例えば奈良県では
人口10万人あたりの医師数が
約165人と全国平均よりも少なく、
医師不足が深刻な地域の一つです。
10年後には少子高齢化の進行により、
さらに医師数が減少する可能性が指摘されています。
また、最も人口あたりの医師数が少ないのは埼玉県で、
10万人あたりの医師数が約141人と全国で最下位です。
一方で、医師数が比較的多い地域でも、
高齢化による医療ニーズの増加に対応するには
十分ではないケースもあります。
6。自分なりの解決策を示す
医師不足や地域医療の課題について、
自分がどのように解決に貢献したいかを
語りましょう。
その解決策が
実行可能かどうかはさておいて、
ただ「地域医療したい」というよりは
何十倍もマシです。
その上、熱意も伝わります。
7、志望動機に現実味を持たせる
「地域に骨を埋める覚悟で云々」といった
漠然とした使い古されたフレーズは
止めた方が良いでしょうね。
面接官も飽き飽きとしていると思いますよ。
きっと何千回も聞いていると思うので。
実際にどのような地域医療を行いたいか、
具体的なビジョンを語るようにしましょう。
説得力が増します。
本当に真剣に考えているんだなという印象を
相手に持たせることができます。
少し例を挙げておきましょう。
例えば、徳島県上勝町では、
地域住民の健康を支えるために
「訪問診療」と「健康管理アプリ」を導入しています。
これにより高齢者の通院負担を軽減するとともに、
住民自身が健康状態を把握できる環境を整えています。
この取り組みにより、
通院が困難な高齢者の医療アクセスが向上し、
生活習慣病の早期発見にもつながっています。
また、長野県佐久市では、
総合診療医を中心とした
「地域包括ケアシステム」を実施しています。
また、病院だけでなく
訪問診療やデイサービスを組み合わせた
医療体制が構築されています。
この結果、住民が自宅や地域で
医療と介護を受けながら
安心して暮らせる環境が実現しました。
さらに、青森県東通村では、
遠隔医療システムを活用した診療が行われており、
地理的な制約を克服しながら
質の高い医療を提供しています。
この取り組みによって、
診療機会が限られていた地域でも
医療アクセスの向上が図られています。
こうした成功事例を参考に、
自分が目指す地域医療の具体像を描き、
それを語ることで、
地域医療に対する熱意や
現実的な理解を面接官に伝えられるよう
リサーチと話せる訓練をしておきましょう。
医学部入試は、
単に学力を問うだけでなく、
医療への理解と熱意を測る場でもあります。
日本の医療の現状と未来を正しく理解し、
自分なりの考えを持つことが合格への近道です。
皆さんが未来の医師として活躍する日を
心から応援しています!