順天以外の変わり種
順天堂大学の小論文の問題は、写真やイラストを見て思うこと、感じることを書かせる問題が毎年出題されていますが、大学入試の小論文の問題の中では、いわゆる「変わり種」といっても差し支えない問題でしょう。
しかし、変わり種の問題には、出典は割愛しますが、順天堂大学の医学部以外にも、以下のような出題が過去にありましたよ。
⇒町の書店をつぶさないためにはどうするべきか?
⇒(問題中の)短歌を読み、あなたが感じたことを書きなさい
⇒不幸を表現しているイラストが提示され、その中から最も共感できないものを選びなさい。そして理由を書くとともにタイトルも考えなさい
⇒リンゴを剥いたことがない子どもに向けてナイフの使用説明書を書きなさい
⇒ジャンルを問わず自分の好きな曲について述べよ
⇒他人のものを奪って学生の願いを叶える壷の精に対し、学生はどんなことを願うか。物語を創作しなさい
⇒自分の現状や将来の意気込みが伝わるような川柳を読みなさい。そして解説しなさい。
心理テスト的なものもあれば、社会をどう見ているのかを問うような問題まで、内容は多種多様ですね。
さて、あなただったら何をどう書く?
受験生の本性を見たい
従来の医学部入試の小論文の問題は、医療を中心とした社会問題や、中長期的な公共政策上の課題、個人的な体験や身近な倫理的な問題などについての課題文を読ませたうえで、受験生の意見を述べさせる問題が中心でした(だから、政治経済系の知識も小論文の授業で講義する予備校が多いわけです)。
もちろん、今でもそのようなタイプの問題を出題する大学が大半です。
しかし、このようなタイプの問題は、予備校や個別指導において、比較的容易に対策しやすいといえます。
頻出のテーマの模範回答的な文章を声に出して読んだり、考え方(落としどころ)を頭に入れて書く練習をしたり、さらに手っ取り早い方法は、小論文指導者が書いた模範回答を書写させれば、短時間の学習でもある程度の域に達することが可能であり、実際に過去、そのような手法で多くの合格者を出しています。
しかし、大学側としては、そのような対策やテクニックの範疇外で、もっと本質的な受験生の内面を見ようとする傾向が少しずつですが出始めてきているのです。
対策が難しい問題
予想できない問題、対策しづらい問題。
初見、ぶっつけ本番状態で受験生は、制限時間の中でどう対処するか?
こうすることで、初めて受験生の本質が見えてくるのでしょう。
今後もこの手の変わり種小論文問題を出題する大学が増えていくことが予想されます。
「これをやれば絶対だ!」という確実かつ有効な対策は存在しません。
しかし、日頃から問題意識を抱き、疑問に思ったことを調べ、ノートに書き写す癖をつけておけば、予期せぬ問題と出会った時の助けになる確率は高いでしょう。
数学や理科系科目で頭がカチカチに固まってしまった時の休憩を兼ねて、気分をリフレッシュさせる感覚で、疑問に思うこと、関心のあることなどをランダムにノートに書き殴る方法も有効かもしれませんね。
それでも、採点者を唸らせるようなオリジナリティあふれる文章を書くことは不可能だと嘆く受験生の方が大勢いらっしゃるとは思いますが、心配はご無用。
極論、「つまらなくても良い」のです。
文学部(哲学美学専攻)や芸術学部(写真学科)の入試の小論文では独創性が求められますが、医学部の問題であることをお忘れなく。
医学部の変わり種の問題が求めていることは、オリジナリティ、ユニークさ、独自性ではありません。
それよりもむしろリアリティです。
つまり、現実的であることを求めます。
ということは?
リアリティある文章でさえあれば、「つまらな」くても大丈夫なのです。
医学部が求めているのはメルヘンチックな物語でも、斬新だったり奇想天外な物語ではないのですから。
心理テストも兼ねている
また、出題側が絵の解釈をさせる意図は、受験生の「心理テスト」もあると考えても良いでしょう。
であるならば、あまりに非現実的で空想的に過ぎる解釈であったり、悲観的だったり、厭世的だったり、何から何まで懐疑的だったり、破壊的・破滅的・暴力的・反社会的な解釈をしてしまうとどうなるでしょう?
ヤバい受験生だと見なされるかもしれません。
医師に不適格な受験生だと見なされるかもしれません。
面倒なメンヘラ受験生だと見なされるかもしれません。
心理状態が正常ではないと思われてしまうかもしれません。
チーム医療には不向きな協調性のない人間と見なされるかもしれません。
だからこそ。
張り切って、空想の世界の住人になりきって、オリジナリティあふれる文章を書こうと思わなくても大丈夫なのです。
真っ当な内容で、多くの人々から賛同を得られそうな内容であれば、ありきたり」でも「つまらない」内容でも構わないわけです。
お医者さんはエンターテイナーではありませんから。
大切なのは、エンターテインメント性よりも、目の前の患者さんの病状(現状)をしっかりと捉え、出来るだけ多くの情報を引き出せる観察力と、それを他の医療スタッフに客観的に伝達できる描写力、表現力、文章力なのですから。